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「こちらG1異常なし」
腕時計を模した通信機に語りかける一人の女。周囲からは、OLが口許を拭っているようにしか見えないだろう。
ヒノモト国、首都ミヤコ。
世界を相手にした無謀な大戦に敗戦後、名実共に民主主義国家を確立、数十年前に目覚ましい経済発展を記録し、度々の不況に陥るも経済大国の名はまだ手離していない。
その首都だけあり、左右に立ち並ぶビルは摩天楼。
狭間に広がる空は、まだ春だと言うのに、太陽が照り輝いている。
──暑い
周辺人口が密集しているせいで余計に汗だくになり、化粧が崩れる。
街路樹からは蝉の声。地球温暖化は脅威である。クールビズごときで誤魔化せるはずがない。
──ああ、クーラーが恋しい
熱気は蜃気楼を発し、視界に移る人とコンクリートのジャングルが揺れている。
しかし彼女は片時も視線を逸らさない。
ぎゃーぎゃー群がる女共。必死に押し戻す警備員。
その狭間から爽やかな笑顔を振り撒く優男。
茶髪に染め、ピアスをつけているが、顔立ちの美しさが品を失わせない。
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