女警備員の腕前

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男の名はカンザキ=セイジ。 ヒノモトで知らぬ人はいないスーパーアイドルらしい。 ……ただし彼女、カツラギ=リンは知らなかった。 なかなかやり手の俳優らしく、こんな状況で暴徒と化したファンたちに応対する様は、成る程感服に値する。 本来なら、スターとは言え俳優の警護如きに彼女が駆り出されるはずがないのだが、ストーカー被害を受けている挙げ句、何度か命を狙われ、しかも犯人は未だ不明。 今回のイベントは多数のファンに囲まれ、移動中は警備が困難な状況になることが予想されたため、応援として呼ばれた。 しかし、だ。 この人ごみの中、要人の傍を片時も離れない彼女は、傍目には熱心なファンと何ら代わりないのだろう。 確かに女である自分が警備員の中に紛れては、ファンの感情を逆撫でする。 だからと言って、好みでもない男を追い回している事実に、カツラギは頭痛を覚えた。
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