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彼女が心中で溜め息をついたその時、動きがあった。
あからさまに漏れ出た殺気を、第六感が捉えた。
伸ばされた無数の腕の中に、輝く刃。
てんやわんやの警備員たちが生み出してしまった隙間、カンザキの笑顔へ真っ直ぐに放たれた。
「危ないっ!」
誰かが叫ぶより速く、彼女は身を呈していた。
ナイフとカンザキを結ぶ直線上へ。
ナイフは彼女の胸に刺さる
……寸前で、方向を変えて彼方へ飛んでいった。
騒然とする場。カツラギは人壁を縫って移動、呆気にとられる女性を拘束後、腕時計に口を近づけた。
「任務完了」
カツラギ=リン、三十二歳。女の身でありながらカタシロ社に並ぶ者がいない凄腕のボディーガード。
今まで担当した要人の九割以上を無傷で護り抜いたため、ついたあだ名は“鋼鉄の女”。
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