クルセイダー

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 カラス頭の黒天使は、折れたそれをむんずと掴むと、アキラ目掛けて勢いよく投げた。  目標を掠めて地面に刺さったそれとは、さっきまで教会の屋根に取り付けられていた十字架――アキラの信仰する『聖天使教会』の象徴(シンボル)である、凡愚は触れてはならぬ神聖不可侵な存在。そのような重要な物を、あの黒天使は、あの黒天使は――。 「てめえええぇぇっ!! よくもそんな事をっ!!!」  普段は陽気な笑みを浮かべるアキラの表情が、一瞬にして憤怒の形相へと変貌した。これでもかと眉間に皺が寄り、覇気で髪の毛が逆立つ。  対して黒天使は、そんな事など意にも介さぬ様子でアキラを見据えると、背中の翼をばさりと羽ばたかせた。途端に凄まじい突風が吹き荒れ、気流の塊がアキラの体躯を押し潰さんとする。  風に怯むアキラの元へ、黒天使は更なる追い撃ちをかける。屋根から飛び降り、そのまま一直線――その巨大な嘴で、アキラの身体を貫こうとしたのだ。 「ふざけるな。そんな事、させるかよっ!!」  顔を腕で覆いながら、アキラは吐き捨てる。そして首から下げた十字架を外し、叫んだ。 「クロスアーツ、我に力を!」
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