クルセイダー

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 刹那、「はっ!」という叫びと共に、クルスは真下から縦に得物を振り上げた。それは『Ⅰ』直線の軌跡を描き、今まさに腕を振り下ろさんとする炎の黒天使を直撃する。  そして最後に、「せいやあ!!」の掛け声に乗せて、クルスは水平にクレイモアを薙いだ。グオオ、と唸る黒天使の体躯に、十字の巨大な切創が輝く。その神聖なる象徴を模った軌跡に焼き尽くされ、黒天使は断末魔の叫びを上げた――。  一方のアキラは、燃え盛る十字槍の穂先をカラス頭の黒天使へと向けると、雄叫びを上げて突撃した。  それはまるで、火の鳥が魔を貫くかのよう。アキラの突撃は神速で黒天使を貫き、十字槍の炎が敵の体躯を包み込んだ。十字架を模った裁きの炎に焼き尽くされ、その黒天使も断末魔の叫びを上げた――。  ――二体の黒天使が倒されたのは、まさに同時だった。刃を収める両者の背後で、汚れた者達を清める炎が燃え上がっていた。  ◆◆◆  黒天使の討伐は終了し、村で行われる儀式は全て完了した。クルスとアキラは村人から感謝を受け、司教は残り、任務を終えた彼等は去っていく。  また一つ、守る場所が増えた。クルスはそれを確信しながら、教皇庁の待つ帰路についた。
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