セントアンジェロシティ

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 広大なる平野の中心で、深淵なる堀と堅牢なる城壁に囲まれて、その都市は存在していた。  教会と同様の名を持つ宗教都市――セントアンジェロシティ。大陸一帯を支配する一大宗教『聖天使教会』の総本山たるその都市は、市内だけでも数多くの教会・寺院・修道院を持つ中心的な場所であった。  そのセントアンジェロシティの中心部に建つ巨大な建物――宮殿、美術館、修道院も兼ねた大聖堂のとある一室の中に、クルスはいた。  聖天使教会に従属し、教会の剣となり、またある時は盾となる教会の軍事機関『教会騎士』。その最たるエリートであるクルセイダーには、個室すらも与えられる。クルスはその窓から、聖堂へと礼拝に向かう人達を眺めるのが好きだった。  自分の護るべき人々が目の前に沢山いる。それだけで、自分がクルセイダーである事に誇りが持てたし、黒天使と戦う日々にやり甲斐が感じられた。任務と訓練に明け暮れる毎日ではあるものの、それを見ているだけで、全ての疲れが清められるのである。  そんな訳で、任務を終えた今日もまた、クルスは個室のバルコニーより広場を眺めていた。  まさにそんな時、アキラが部屋に入って来たのである。
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