セントアンジェロシティ

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「おいクルス! ……またぼんやりとしてたのか、お前は。今ヒマだろ!? ちっと散歩に付き合えよ」  アキラの口より発せられたのは、そんな暇潰しへの誘いだった。これは、任務も訓練も無い時間帯にはいつも起こる出来事だった。  別にクルスには、それを拒む理由は無い。アキラはそれに乗り、自分の部屋を出た。  ◆◆◆ 「『プット』で限定で売ってたぜ。ほいよ」 「――ありがとう」  教会御用達とも称される洋菓子店にて売られていたシュークリームを渡され、クルスはそれにかぶりついた。固くて薄い生地の感触の後に、クリームのほんわかとした甘みが、口の中に広がっていく。洋菓子はクルスの好みの中でも最上位に君臨する存在であり、たちまち彼は全て食べ尽くしてしまった。  広大なセントアンジェロの宮殿を歩く二人。その広さはかなりのもので、幼少の頃よりここの修道院に住んでいたクルスでも、未だに足を踏み入れた事の無い場所が多々存在する。今回はアキラの誘いでそんな場所の一つである、南東の尖塔へと行く事になった。  その塔は、とある理由で二人とも、今まで入る事が許されなかった場所だった。
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