セントアンジェロシティ

4/12

362人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
 大陸の南部。そこは未だに聖天使教会の力が及ばぬ領域で、まさに異界と呼ぶべき地であった。  殊に南東部は秘境中の秘境で、一説によれば数多くの黒天使がそこで生まれ、聖天使教会を転覆させ大陸全土を支配せんとする『邪教』が、そのような事を行っていると考えられていた。  そんな場所を遥か遠方より臨む事の出来るその尖塔は、この都市において、まさにその穢れの地に最も近い存在である。教義の浅い者がそこを登り、一度その地を眺めてしまえば、立ち所に心身は『邪教』に蝕まれ黒天使と同じ末路を辿るであろうと言われていた。  しかし、現在の自分達は、教会の精鋭たる戦士である。年こそ浅くはあるものの、深く教義を学んだ立派な騎士だ。さすがに拒まれはしないだろう。そう思い、アキラはその場所を散歩の場に選択した。全く、若者の好奇心が成せる思考である。  そして何より、教義の深さもそうであるが、クルスとアキラには二人とも『邪教』に対する激しい嫌悪と敵意が存在し、『邪教』には穢されぬという自信があった。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加