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「それにしても、今回はそんな場所を誘うとはな。本当、アキラも酔狂な奴だ」
自分の部屋からその尖塔へと通ずる道の途中にあるセントアンジェロの美術館前を通りながら、クルスはぽつりと言った。
「ハハッ。まあ、そう言うなって。いわゆる、怖いもの見たさって奴よ。それに――」
ここで陽気に返していたアキラが、どこか真剣な表情になる。
「――俺はあんな言い伝え通りの人間なんかにはならねえ。奴らは、神も、聖天使も信じちゃいねえ。十字架すらも馬鹿にする糞野郎共だ。そんな奴らのどこが良いっていうんだ。なあ? クルス」
「あ、ああ。しかし、それ以上に気に食わぬのは、奴らが黒天使を作り出し、人々を苦しめているという事だ。それが事実であるならば、俺は断固として、その『邪教』を許すわけには行かない。だから俺も、そんな人間になる気は毛頭ない」
若干、アキラの迫力には押されたクルスであったが、それを跳ね退けるかの如く『邪教』に対する考えを述べた。
それを聞き、アキラがニカッと笑う。
「俺達、本当に気が合うよな」
「――そうだな」
クルスもまた、微笑を浮かべた。
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