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塔の最上まで登ると、眩しい太陽の光と気圧による強風が彼等を出迎えた。
「おい。これ、すげえいい眺めだぞ」
「ああ、セントアンジェロの町が一望出来る」
眼下に広がる絶景に、二人は歓声を上げる。聖堂の全貌はもちろんの事、中心の繁華街の様子や噴水の公園で遊ぶ子供達、町外れの小さな教会や都市全体を囲う城壁まで、ここはセントアンジェロの全てを臨む事が出来たのだ。いつもは聖堂入口の広場しか見ていないクルスにとって、ここは何とも言えぬ場所だった。
そして、少し目を遠い方へと向けると、さらに広大な平原が城壁の向こうに広がっていた。森林も見られるが、多分あそこのどこかに、かつて任務で行ったマシュロの村があるのだろう。そして、更なる向こう。あれが――。
「あれが、『邪教』があるっていう南東の世界か」
森林の更に向こう。分厚い雲が空を覆った、何やら重ったるい空気の世界が、そこにあった。
「でも、別に大した事ねえな」
アキラの言う通りだった。確かに何か物々しい雰囲気ではあるものの、別に見た所でなんとも感じなかった。これは、自分達の教義の深さのおかげなのだろうか。
ふと、二人は、自分以外の人間がここにいる事に気が付いた。
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