セントアンジェロシティ

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 その人物は展望台の手摺りに設置された望遠鏡を覗き込んだまま、微動だにしていなかった。  着込む衣服は、フルプレートの甲冑と緋色のマント。尖塔の入口にいた門番の者より、ずっと高位な騎士が着る衣装をしている。  見張りがいるのは知っていたが、まさかそんな所でそんな事をしているとは思わなかった。アキラが声を掛ける。 「おっす! お疲れ様っす!!」  そして、その肩を軽く叩いた次の瞬間だった。  見張りが望遠鏡から目を離したかと思いきや、そのまま床に崩れ落ちたのだ。 「え……?」  思わず駆け寄る二人。ころころと兜の外れた男の顔は、何か恐ろしいのを見たかのような形相で歪み、額からはおびただしい量の血が流れていた。 「……死んでる」  男の脈を調べたクルスは、そう言って愕然とした。死因は恐らく、頭の出血の原因とされる凶器。しかもそれは――黒天使の羽だった! 「なんで、なんでこんな事が!?」  動揺を隠せず、クルスはまたもや声を漏らす。しかしここで、アキラが叫んだ。 「! 伏せろっ!!」  刹那、何かが展望台に襲い掛かってきた。
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