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伏せたクルスとアキラのすぐ真上を、それは猛スピードで通過して、硬いはずの塔の壁に刺さった。
「おい、こいつは……」
起き上がったアキラは、刺さったそれを改めて確認して息を飲む。
邪悪の塊としか言いようの無い、闇夜のように真っ黒な色の羽。それは間違いなく、黒天使の羽としか考えられなかった。
「黒天使が、セントアンジェロのどこかにいると言うのか!? くそ、一体どこに」
今まで黒天使の出現など一切無かったとされる唯一の町が、このセントアンジェロシティである。そこでこれが見られたとなると……、二人の間に、一気に緊張が高まる。
――その存在に真っ先に気付いたのは、アキラだった。
「おい! あそこ!!」
アキラの指差す向こう――太陽の方向から、その眩しい光に隠れるようにして、そいつがこちらに接近してきたのだ。
頭部、胴体、脚部をそれぞれ一対の翼で隠し、頭頂部には汚れた天使の輪。そして、背中からは巨大な漆黒の双翼。そう、八枚羽の黒天使である。
気付かれたのもつかの間、その黒天使はまたもや、無数の羽根を射出した。
回避する二人。だがそれ以上に恐ろしい事が、眼下の町で起こっていた。
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