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「馬鹿かてめえええぇぇーっ!!」
愕然とするアキラをよそに、クルスと黒天使は地面へと急降下していく。
しかし、落下中なのにも関わらず、クルスは刃を振るっていた。敵より上を維持し、臆する事など全く無く、ただ目の前の敵を倒す事それだけを一心にして、大得物を敵へと向けていた。
そして、クルスはほんの一瞬の隙を突く。黒天使の腹部のど真ん中に、クレイモアを深々と突き刺したのである。
これだけで黒天使が死ぬ事はまずない。しかし、これはピンの刺さった蝶と同じ。虚空で剣に打ち止められ、その場から退く事すら許されない。
「我、聖天使の御名に於いて、汝を断罪する――」
クルスの口より紡がれる必殺の呪文。最後の抵抗とばかりに、唯一自由の翼をはためかせて、黒天使は羽根を放つ。
鋭い羽根が、頬を、手を、肩を切る。しかし、クルスの口は止まらない。
「――その命を以って、これを贖罪せよ!」
突き刺さったクレイモアが、全ての魔を焼く閃光を放った。
そして、刺さったまま剣を振り上げ、留めに頭を左右に薙いだ。黒天使の上半身に、断罪の十字架が刻まれる。
――十字架に焼かれ、天使が消えた。
そして、クルスは改めて、自分が落下している事に気が付いた。
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