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――しまった!
気が付いた所でもう遅かった。クルスの眼前に広がるのは、セントアンジェロの大地を形成する大理石の石畳。もしこのまま衝突すれば、クルセイダーたる彼とてただでは済まされないだろう。
クルスはこの時、落下していく速さが、異常に長く感じられた。しかし、いくら身軽な彼であっても、受け身で身を守る余裕などは無かった。無情にも、冷たい大地は次第に迫って行き、
クルスの目と鼻の先で止まった。
「ふぅ、あっぶねえ」
その声は、クルスの『足元』から聞こえてきた。
間一髪の所で、アキラが脚を引っつかみ、クルスの落下を止めていたのだ。それも、片手で十字槍を壁に突き刺した状態で。
落下が止まった事により、クルスは地面に手を付き、前転するように着地する。
「すまない。ありがとう」
「ったく、無茶すんじゃねえよ」
そして、アキラも槍を壁から抜き、地面に着地した。
その時、更なる悲鳴が二人の元に入って来る。既に黒天使の軍勢は、すぐそこにまでやって来ていたのだ。
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