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掛け声を乗せて、剣が振り下ろされる。
その時、クルスの下ろしたクレイモアと黒天使の持つ剣の刃が、真っ向から衝突した。
その黒天使の外見は、他とはこれまた異なっていた。翼と輪っかはそのままに、サイを彷彿とさせる一本角が頭から生え、唾液の滴るそいつの口と奇っ怪な溝の彫られた剣は、真紅の液体で濡れていた。
互いに刃を交えながら、両者はしばし硬直する。――先に動いたのはクルス。
「邪魔を、するな!」
一瞬の隙を突き、クルスは勢いよく刃をかち上げた。黒天使の剣が上段にまで持ち上げられ、胴から下ががら空きになる。
クレイモアが袈裟に振り下ろされた。そして、返すように反対側の刃で切り上げ、一歩踏み込み逆袈裟にまた振り下ろした。
それをもう一度――と行こうとした次の瞬間、クルスはもう一体の敵を感知する。背後に向かって飛び受け身をしたその時、彼のいた位置を何かが通り過ぎた。
それは、あのカラス頭の黒天使。マシュロ村での時とは別の個体が、サイ頭の黒天使を援護する形で飛来してきたのである。
カラス頭の黒天使は、空中でベクトルを変え、またこちらへと接近してきた。
「貴様も、同じく――!!」
そう吐き捨て、クルスは柄を握り締める。
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