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教会騎士の甲冑すら粉砕せしめる嘴が、猛スピードでこちらに迫る。
だが、今のクルスには、退却という文字など存在してはいなかった。在るのはただ、眼前の敵を撃破し、逃げ惑う人々を一人でも多く助ける事それのみ。
「――とっとと失せろっ!!」
クルスの鮮やかな水平の斬撃は、見事なまでに黒天使の嘴を直撃した。それは嘴の硬さを打ち破るまでには至らなかったものの、まるで野球のバッティングのように黒天使の身体を吹っ飛ばすのには十分だった。
カラス頭の黒天使が、今まさに接近して剣を振り下ろさんとしていたサイ頭の黒天使に直撃する。
これにより生じた絶好の機会。クルスは必殺の呪文を叫ぶ。
「我、聖天使の御名に於いて汝等を断罪する者。その命を以って、これを贖罪せよ!」
光を放つクレイモアを手に、クルスは敵へと駆ける。
カラス頭の黒天使へと、まず真下から真上への斬り上げ、次いでサイ頭の黒天使をも巻き込んだ水平の斬撃、そしてサイ頭の黒天使への一直線の振り下ろし。たった三方向の斬撃が、二体の身体に二つの十字架を刻み込んだ。
聖なる傷に焼かれ、やがて二体の黒天使は消滅していく。しかし、クルスの足は止まる事を知らなかった。
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