悲劇と心傷―トラウマ―

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 素早い刺突。隙の一切を削ぎ落とした一撃は、ガードさせる暇(いとま)も与えず黒天使の体躯を捕えた。  次いで、長柄のリーチを活かした左右の薙ぎ払い、返し。大きく円を描いての右下からの振り上げ、左下からの振り上げを流れるように繰り出していく。  敵の黒天使も負けじと、鋭利な爪の生えた腕を振り上げた。しかし、アキラはそれを防ぐ事はせず、石突の方の柄を素早く操り、黒天使の足元を払う。見事な足払い。バランスの崩れた黒天使は、そのまま地面に転倒した。  間髪入れず、アキラはそこへ槍を突き立てる。だが、黒天使は転がるようにして、その刺突を回避してしまう。  次の瞬間、黒天使は横たわった状態のまま、口から火炎を放った。それは先刻のものよりは火力も数も少ないが、アキラを怯ませるには十分だった。  しかし、立ち上がった髑髏頭の黒天使は、アキラに追い撃ちをかけなかった。さっきの猛攻を受け、敵う相手だと思わなかったのか、踵を返して聖堂の方へと飛んでいってしまったのだ。 「な、ふざけんなてめえ! 待ちやがれこん畜生がっ!!」  慌てて追い掛けようとするアキラ。しかし、その背後から別の黒天使が接近していた。
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