362人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
舌打ちしたアキラは壁から槍を引っこ抜き、そのトカゲ頭の黒天使を止めるべく落下する。
一方の黒天使は、アキラの存在など気付いていないようだ。ただ「あの獲物はどこ行ったんだ?」とばかりに、真っ直ぐ突き進むのみだった。アキラの守るべき、象徴がある所へと。
させる訳には行かない。落下しながら、アキラは必殺の呪文を叫ぶ。
「我、聖天使の御名に於いて、汝を断罪する者。その命を以って、これを断罪せよ」
十字槍が燃え上がり、不死鳥の姿となった火炎が、真上から黒天使を刺し貫いた。直撃した黒天使は十字の炎に包まれ、やがてその姿を消失させる。
「ったく、俺もクルスみてえな事、やっちまったな」
その場から立ち上がり、槍を構え直しながら、アキラは一人愚痴った。しかし、大きな影が彼を通り過ぎた途端、アキラは愕然とする。
巨大な容積を誇る聖堂のエントランス。その空間全域に、黒天使が大量にいたのである。あの黒天使以外に内部に入り込んでいた者は、他に沢山いたのだ。
「嘘だろ……。俺以外にもクルセイダーはいるはずだ! なのになんで、こんなにいやがるんだよ!!」
だがすぐに、それは愚問である事を思い知った。
黒天使の軍勢は、既にセントアンジェロの全てを覆い尽くしていたのである。
最初のコメントを投稿しよう!