クルセイダー

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『ヒマか?』 「いや、断じてヒマじゃない」 『ハハッ。そうだろうな』  銀で縁取られた詰め襟の裏に隠された無線機より、相棒であるアキラの陽気な声が聞こえてきた。クルスはぶっきらぼうにそれを返し、アキラは笑って反応する。  アキラは、クルスと同じクルセイダーの一員だ。彼とクルスは、聖天使教会の行政機関である教皇庁より、辺境の農村にある教会にて行われる儀式の警備をせよという命を受け、このマシュロの地にやって来た。そしてアキラは今、その教会の内部の警備を行っている。  辺境の農村で行われる儀式と聞いて、何か布教活動のようなものかと期待した二人だったが、その内容は単なる説教。聖天使教会の教えを、また改めて人々に伝え導く事のみだった。要は退屈なスピーチである。  したがって、ついさっき襟元よりアキラのそんな無線が来た訳なのだが、クルスの返答は本心によるものだった。そしてクルスは、アキラの言っている事が至極冗談だという事は分かっていた。  教徒である彼等にとって、今教会にて行われている事は非常に大切な事である。そして、それを警備するという自分達の行為は、とても責任のある事であるし名誉な事でもあるからだ。
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