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名前を呼ばれた司教は、嬉しそうに顔を緩ませた。
アレサンドロ司教は、アキラにとって馴染み深い人物の一人だ。
幼い頃に故郷を失い、昔から修道院で暮らしてきたクルスとは異なり、枢機卿と上級教会騎士との間に生まれ、幼少の頃から聖天使教会のエリートとして育てられて来たアキラにとって、アレサンドロ司教は自分を教育してくれた恩師のような人物であった。事実、彼は修道院や神学校でも教鞭を振るっていたし、クルセイダーとなった今でも、自分を支援してくれる大切な存在だった。
アレサンドロ司教は、そんなアキラの問いに対して、ある物を僧依から取り出した。
「ついさっき、教皇庁からある情報が手に入ったのでね。それを、アキラ君と、クルス君に見せようかと思ったんだよ」
「……情報?」
ある物とは、写真だった。司教から手渡され、アキラはそれを凝視する。
そこには、あの日、自分達が前を通り過ぎた美術館の内部が写されていた。その中のある展示物の前を、何かが通り過ぎていく様子が描かれている。
「なんだこれ? 何が写ってんだ?」
思わず疑問を口に出すアキラ。それを司教が答えた時、彼は驚愕する事になる。
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