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「あくまで教皇庁からの情報なんだがね、これは『英霊会』の幹部だそうだ」
「『英霊会』……だって?」
その名前は知っていた。大陸南部にて興されたという小さな教団で、アキラの中では、過去の英雄の御霊を崇拝し、神や天使といった想像上の存在を否定する集団として記憶されていた。
――あのいけ好かねえ連中の人間が、なんでそんな所にいやがんだ? もう一度写真を眺めながら、アキラは眉を潜める。
「しかも、これはあの日、襲撃された時に撮影されたもののようだ」
「何だと!? じゃあ、それはつまり――」
その発言に、アキラは動転した様子で司教を見た。
「あの混乱に乗じてやったとしても、偶然にしてはいくらなんでも事が良すぎる。『あれ』は彼等が意図して『やった』と考えても、あながち間違いではないだろう」
「じゃあ、やっぱりこりゃあ」
確かにあの襲撃は異常過ぎた。アキラでさえ最後は槍を振るうだけで精一杯だったあの状況下で、都合よく適当な物を盗んで帰れる訳が無い。アキラの推察する通り、これは紛れも無く――
「――『英霊会』からの宣戦布告と考えても、おかしくはないだろう」
そして司教は、クルスの部屋の扉を開けた。
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