悲劇と心傷―トラウマ―

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 ◆◆◆  目の前に、その写真がある。  膝を折ったままベッドの上に座り込むクルスは、それに釘付けのまま動く事が出来なかった。 「――そういう訳だ。どうやらあん時の襲撃とそいつらには、何かしら関係があると考えていいらしい。いや、そうとしか考えられねえ」 「だから、君とアキラ君に頼みたいのだ。その『英霊会』についての更なる情報を、君達で探ってほしい。居場所だけは、既に教皇庁が掴んでいる」  写真についての情報は、アキラと司教から告げられた。  次の瞬間、荒み果てたクルスの心の中で、何かか熱く燃え上がった。それは、どこか黒く冷たい何かを孕んではいたが、次第に強く激しく燃え盛るものだった。  目の前に、あの悲劇の元凶の一つと考えられる存在がいる。彼にはそれだけで十分だった。  クルスの手にするその写真が、次第に強く握り締められていく。そして、無言のままベッドから立ち上がったその瞳には、既にあの時の光が燈されていた。黒天使と戦う時の、あの正義に満ちた眼光が。 「お前、ホントわかりやすいな」  苦笑を浮かべつつ、アキラは友の復活を喜んだ。
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