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その女性は、朽葉色のバンダナを巻いた頭に、錆びた鉄のような赤毛を左右に分け、地味な色彩のブラウスとスカートの上にこれまた地味なエプロンを乗せた、カミラとは異なる美貌を持った少女だった。
また彼女は、クルスとカミラが初めてこの酒場に入った時、自らをソフィと名乗っていた。
「あ、いや……。さっきは怒鳴ってすまない」
本来その言葉は先刻酔いどれの群れへと避難した修道女へと向けられるべきなのだが、ソフィは「いえ」とだけ答え、それを優しく受け取った。
「クルス、という名でしたっけ? 旅の者のようですが、やはり大変なのですね」
先程クルスに差し出した、からっぽのティーグラスとケーキを乗せた皿を回収しながら、ソフィは口を開く。
「あ、まあな。本来ならば、志を共にする友人と行きたかったのだが、何の間違いか、あの者と行く嵌めになってしまった」
――本当、大変だ。クルスはそう付け加え、背後の喧騒に参加して酒を飲み始めたカミラを見た。自ずからアルコール支配の傘下に入らんとするその様子に、彼もソフィも共に苦笑を浮かべた。
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