異端審問局の修道女

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 思わずきょとんとした表情を見せるソフィ。そんな姿が眼前に映った途端、クルスは「あ」と我に返った。 「入らないか、と言われましても、私達はあまりそのようなものには縁はありませんので、その……困ります」  あまりにも当然の答えが返ってきた。いきなり未知のモノを誘われて、ほいほいと乗る者など常識的に考えて少ないではないか。  なのでここで一つ、こほんと咳ばらいをして、クルスは話題を少し変える。 「ネロ・アンジェロという、黒い怪物を知っているか?」 「人々を殺め、場合によっては村や町をも滅ぼすという、悪い天使の事ですか? それなら知ってます。私も小さい頃から、そんな話をこの村で」  その問いには、ソフィはすぐさま答えてくれた。  ――やはり黒天使は、この辺りにもいるのか。そんなソフィの答えを聞いて、クルスはまた自分の故郷の姿を思い浮かべた。 「そうか。なら、話は早い。実は、俺達の入っている聖天使教会は、そのネロ・アンジェロから人々を護る為に戦っているんだ。この村も聖天使教会に入れば、教会が建って、ネロ・アンジェロの脅威から身を守る事が出来る。だから、是非とも入って欲しいんだ」  そう言ってクルスは、自分の首から下げた十字架を、ソフィに見せた。彼女の表情は、半信半疑のままだった。
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