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ぎょっとして振り返ると、いきなり視界一杯に、肌色の二房が広がった。
「な……、カミラ……?」
物凄く酔っていた。
修道衣のスリットから覗く美脚は既に千鳥足で、クルスへと向けているはずのその視線は、焦点が合っているかどうかも疑わしい。ただでさえ大胆に開け放たれていた襟元はさらにだらし無くよれ、ともすれば、本当に見えてしまいそう。
「こぉんなにせくすぃなわたしなんかといっしょにいるよりも、そんな子とふたりきりではなしてる方が楽しいっていうのお? ねえ、クルスちゃあん!?」
酔いでぐちゃぐちゃになった華麗な顔を近付け、カミラはさらに接近してくる。
「だ、だから貴様、寄るなと本当に何度言えば……。これ以上、俺に酒臭い顔を近付けるな!」
ただでさえ鬱陶しい存在が、アルコールの臭いも加わるとこんなにも不快さが倍増するのか。嫌悪感を露骨に顔に描いて、クルスはまたもやカミラを跳ね退ける。
だが次の瞬間、また尻餅をついたカミラの表情が豹変――ソフィ(と自分の胸)を一瞥し、目から大粒の涙を流しはじめたのだ。
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