異端審問局の修道女

13/17

362人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
 ぎょっとして振り返ると、いきなり視界一杯に、肌色の二房が広がった。 「な……、カミラ……?」  物凄く酔っていた。  修道衣のスリットから覗く美脚は既に千鳥足で、クルスへと向けているはずのその視線は、焦点が合っているかどうかも疑わしい。ただでさえ大胆に開け放たれていた襟元はさらにだらし無くよれ、ともすれば、本当に見えてしまいそう。 「こぉんなにせくすぃなわたしなんかといっしょにいるよりも、そんな子とふたりきりではなしてる方が楽しいっていうのお? ねえ、クルスちゃあん!?」  酔いでぐちゃぐちゃになった華麗な顔を近付け、カミラはさらに接近してくる。 「だ、だから貴様、寄るなと本当に何度言えば……。これ以上、俺に酒臭い顔を近付けるな!」  ただでさえ鬱陶しい存在が、アルコールの臭いも加わるとこんなにも不快さが倍増するのか。嫌悪感を露骨に顔に描いて、クルスはまたもやカミラを跳ね退ける。  だが次の瞬間、また尻餅をついたカミラの表情が豹変――ソフィ(と自分の胸)を一瞥し、目から大粒の涙を流しはじめたのだ。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加