クルセイダー

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 途端に火柱が上がり、村を震撼せしめる爆音が轟く。  そしてクルスは見た。火炎の放たれし方角の屋根の上で、その元凶が宙に浮かんでいる事を。 『おいクルス! 今の爆発は、まさか!?』  襟元より飛び出すアキラの声に、クルスは低い声で答える。 「ああ、黒天使(ネロ・アンジェロ)だ」  背中より広がる双翼を羽ばたかせ、まるでクルスを見下ろすかのように、黒天使は虚空で佇んでいた。  何事かと教会から飛び出した村人が、その姿を見て恐怖のあまり絶叫する。  悪魔を彷彿とさせる骨張った体つき。両手両足から生えた長い爪。髑髏を思わせる黒い顔より光る、血走った赤い眼。そして、黒天使に共通する一番の特徴である、背中から生えた漆黒の翼と、頭頂部にて浮かぶ汚れた色の輪。  その醜悪な怪物の襲来に、教会の周囲は阿鼻叫喚の巷と化す。  そんな修羅場を楽しむかのように、黒天使は大口を開け、轟々と燃え盛る火炎を吐き出した。その行く先は、クルスのすぐ近くである教会の入口。 「くっ!」  一言吐き捨てたクルスは、突如首から下げた十字架を外す。そして、力強く叫んだ。 「クロスアーツ、我に力を!」
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