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「全く面白い奴らだったぜ! 待ってるぞーっ!!」
「お姉ちゃん、また一緒に飲もうなーっ!」
「兄ちゃん、ちったあその子も大切にしやがれよーっ!!」
昨日酔い潰れていた農夫達も、村を去る二人を熱い声援で見送った。かつての狂乱をもたらした大声と変わらぬというのに、それは優しく温かい追い風となって、クルス達の背中を押していた。
歩きながら、カミラが隣で口を開く。
「なによぉクルスちゃん、随分と嬉しそうな顔してるじゃない」
「いや別に。本当にこの村はいいなあと思った。それだけだ」
「ふうん。ま、私も同じく、いい村だと思うなあ」
――でもそれ以上に、久しぶりに見れたクルスちゃんの笑顔の方が、ずっとずっと可愛くていいなあ。
――抜かしやがって。
そして二人は最後に、村をまた顧みて手を振った。やがて彼等の姿は、村の外へと消えていく。
クルスの意識はまた、本来行くべき場所へと瞬時に変化した。
『英霊会』
それは、忌まわしき根源があると噂される謎の集団。そこへと向かっているという事実に、自分の鼓動は再度激しさを増していく。
――覚悟しておけ。
首から下げた十字架が、キラリと強く閃いた。
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