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それは、なんとも巨大な館だった。
盆地という名の自然が織り成す天然砦のど真ん中に『嵌め込まれた』それは、独特な建築様式で形作られており、ある種の神秘さも感じさせられた。
あの村を出て、暗く鬱蒼とした森を抜け出た場所に、こんな立派な建物が存在していたとは! 眼下に広がるその姿に、クルスは無意識のうちに見取れてしまう。
「見てクルスちゃん、『千里眼』が反応してる。教皇庁が言ってたのはここだったんだよお!」
修道衣の裏から羅針盤のような物を取り出して、カミラはクルスへと叫んだ。彼女の手にする『千里眼』――クロスアーツと同じく聖天使教会技術部によって作られ、全クルセイダーへと支給される円盤状のアイテムは、確かにその館の位置を目的地として指し示していた。
それがあったからあの陰樹林の道無き道も迷う事無く進めた訳であるが、よく教皇庁はこの居場所を見つけ出す事が出来たものだ。その情報力に感心すると共に、ある意味畏怖の念を抱く。
そして何より、あの中にいるのだ。例の写真に写っていたあれが、そして、あの悲劇の根幹が。
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