英霊会

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 カミラがそんな事を言うのも無理は無かった。それほど、この館の守りは堅牢だったのだ。  初めてこの館を見下ろしたあの短時間で、カミラはある程度の鳥瞰図を、脳内で完成させていた。  敷地全体は高い塀に囲まれ、内と外を繋ぐのは、正面にある正門か左右にある東西門のみ。また外壁だけに留まらず、母屋と思しき最深部へは、同じような防壁が二重にも三重にも立ちはだかっていた。しかも、段々と高くなっていく構造で。  当然、そこを通り抜けられる場所には門番が立ち、敷地内の所々にも見張りは立っている。もしあれらが全て自分達よりも弱いと分かっているならば、別に強行突破しても何ら差し障りは無いだろう。  しかし、相手は未知の敵だ。もしかしたら、自分達より強いというのも大いに有り得る。下手に目立つような行動は避けたい。第一今回の任務は、この地の襲撃でも制圧でも殲滅でもなく、単なる調査だし。  だから、ここはしばらく様子を見て、人が少なくなる時間帯を見極めて、こっそりと侵入しようとカミラは提案したのである。  が――  ここで彼女は、自分の胸に顔を埋める少年が、息をしてない事に気が付いた。
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