英霊会

8/20
前へ
/252ページ
次へ
「あ」  慌てて頭を胸から離すと、彼は白目を向いたまま失神していた。その体躯には既に力は無く、重みに引きずられるままに、地面の上へと倒れる。つまり、  ――クルスちゃん、窒息しちゃったああああああぁぁぁー……。  すぐそこに敵地があるが故に叫ぶ事も出来ず、口元を両手に押さえたまま、カミラは込み上がる悲鳴を押さえ込んだ。  結局クルスが意識を取り戻したのは、夜が更けた頃だった……。  ◆◆◆  門の近くで篝火が点され、辺りは一風変わった雰囲気となっている。パチパチと舞い上がる火の粉が星空へと溶け込んで行き、真夜中の館を明るく彩るその様は、一種の幻想的な雰囲気を醸し出していた。 「――で、結局どうやって侵入するんだ?」  巨木の枝から内部を覗き込みながら、クルスは下のカミラへと尋ねる。 「うーん。とりあえず、ここは隅っこから入ってみよう。こうゆうのって、変な所に秘密の入口があるって、相場が決まっているんだよお」  腕を胸元で組みながら、彼女は答えた。この位置からそんなカミラを見ると、さっき自分を半殺しにした凶器が強調されて映るから、なんだか気分が悪い。  早々と飛び降り、クルスはカミラと共に外壁の外側を移動する。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加