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「あ」
慌てて頭を胸から離すと、彼は白目を向いたまま失神していた。その体躯には既に力は無く、重みに引きずられるままに、地面の上へと倒れる。つまり、
――クルスちゃん、窒息しちゃったああああああぁぁぁー……。
すぐそこに敵地があるが故に叫ぶ事も出来ず、口元を両手に押さえたまま、カミラは込み上がる悲鳴を押さえ込んだ。
結局クルスが意識を取り戻したのは、夜が更けた頃だった……。
◆◆◆
門の近くで篝火が点され、辺りは一風変わった雰囲気となっている。パチパチと舞い上がる火の粉が星空へと溶け込んで行き、真夜中の館を明るく彩るその様は、一種の幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「――で、結局どうやって侵入するんだ?」
巨木の枝から内部を覗き込みながら、クルスは下のカミラへと尋ねる。
「うーん。とりあえず、ここは隅っこから入ってみよう。こうゆうのって、変な所に秘密の入口があるって、相場が決まっているんだよお」
腕を胸元で組みながら、彼女は答えた。この位置からそんなカミラを見ると、さっき自分を半殺しにした凶器が強調されて映るから、なんだか気分が悪い。
早々と飛び降り、クルスはカミラと共に外壁の外側を移動する。
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