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壁に沿って暗がりの道を歩く事しばし。小さな灯を見つけた二人は、そこに物凄く簡素な入口があるのを認めた。
幅は、人間の肩幅よりも少し広いくらい。他の門のような豪奢な作りは一切なく、塀に四角い穴を空け、そのまま門とした程度の粗末な構造となっていた。しかもその陥穽を、さらに門番が塞いでいる。
刃物を提げて衣(きぬ)を纏った門番の姿は、教会騎士程度しか衛兵を見た事の無いクルスにとって、なんとも珍しい身なりのように感じた。
敵の数はそれ一人。しかもこちらに気付いていない。ここは、内部の人達に気付かれぬよう、こっそりと始末した方が良さそうだ。二人の意見は瞬時に一致した。
――ガサリと音がした。
不審に思った門番が、門を離れてその出所へとゆっくり近付く。
刹那、背後から何者かに強打され、そのまま意識を失った。
音を出していた茂みからクルスが立ち上がる。そして、倒れた門番の背後にカミラが着地した。クルスの出した音に気を取られていた隙を突き、カミラが後頭部へと鮮やかな回し蹴りをぶち込んだのである。
今夜の記憶ごと意識が吹っ飛んだ哀れな門番を軽く見遣り、二人は門をくぐる。
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