クルセイダー

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 ――次の瞬間、黒天使の放った火球が大きく爆ぜた。先刻のよりも更に激しい爆音が轟き渡る。  しかし、それは黒天使も認識した。教会を狙ったはずの攻撃が、火の粉一粒も到達してなかったのである。  その時、爆炎と黒煙の残滓を振り払い、クルスがその向こうから現れた。彼の姿は変化していた。首から下げた十字架は消え、代わりに彼の両手には、十字架を摸した巨大な剣――クレイモアが握られていたのだ。  彼の一振りが、黒天使の炎を防いだのである。 「おー、おー、こいつぁ凄えなあ、おい」  逃げ惑う村人に混じって、クルスの隣にやって来た男が一人。アキラである。  セミロングの黒髪を揺らすクルスとは事なり、アキラの髪型は肩に掛かる程の長い茶髪。黒衣の中に着てある黒いシャツは、クルスは首まで締めてる一方で、アキラはだらりと開けていた。  地味で幼げな印象がありながらも凛とした風格を漂わせるクルスとは対称的に、どこか飄々とした明るい笑みを浮かべるアキラは、一度壁の燻る教会を見遣った後、クルスへと声をかける。 「今ん所、被害は壁の一部だけか? その様子じゃ、俺は出る幕無さそうだな」 「ああ、アキラは村人達を頼む。俺は、あの黒天使を倒す!」  そして、クルスは忌むべき怪物の元へと駆け出した。
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