英霊会

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 こんな建物には秘密の入口があると相場が決まっている――そんなカミラの憶測がまさか当たるとは。ちっぽけな門をくぐりながら、クルスは密かに感嘆した。  いきなり目の前に内塀が迫る。そして横を見ると、塀に挟まれた一本道が片方だけにずっと伸びていた。どうやらここは、館の敷地内の隅っこのようだ。篝火は無いが見張りの姿も見えないので、警戒しつつ真っ直ぐ進んでいく。  しばらく歩いていると、内塀側に木造の扉があるのを見つけた。内塀が外塀よりも高くなっているのは、下部に積み上げられている石垣によるものなのだが、その扉は石垣に寄り掛かるようにして作られていた。  近付き、ドアノブに手をかけてみる。なんと鍵はかかっていないようだ。開けてみようかと二人は一瞬悩んだが、どうせこの道を進んだ所で、見張り共がうようよいる正門前の広場に逆戻りするだけだ。意を決し、クルスはそのドアを開ける。  二人を出迎えてくれたのは、むせ返るような埃の群れと鼻を刺すような黴の臭いだった。所々でランプの明かりが小さくちらつき、小さな羽虫がそこに寄ってたかっている。ここは何かの倉庫だろうか? 調査という任務を思い出し、二人は中へと入っていく。
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