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粉塵を纏った汚い木箱、文字が識別出来ないほど汚れた書物、くすんだ古い彫像の山……一体なんなんだこの汚い部屋は! 神聖そうな外見の建物だったが、まさかこんな部屋まで存在していたとは。ここは宝物庫の類ではなく、単なるゴミ溜め的な場所なのだろうか。天井の隅に出来た蜘蛛の巣を見ながら、クルスは溜め息をついた。
「なんか不気味な場所だね。あ、もちろん、怖くなったらいつでも、お姉ちゃんにしがみついていいよお」
「……よくこんな場所でもそんな事が言えるな」
相も変わらずの相棒を見て、クルスは吐く息はさらに重くなる。
その時、頭上からぎしぎしと板を踏み締めるような音が響いてきた。それはだんだんと下りて行き、徐々にはっきりと聞こえてくる。
――ったく、内塀側の倉庫の鍵閉め忘れたくらいであんまし怒んなっつうんだよ。誰もそこ開ける訳ねえのにさ。ああやだ。こんな怖えとこ長くいられねえよ。早く終わらせねえと。
男の愚痴る声だ。彼の燈す篝火だろうか。動く明かりが、ゆっくりとこちらに近付いて来ている。
そいつに気付かれないよう、二人は近くの木箱に隠れた。
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