英霊会

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 篝火に照らされた男の輪郭が、次第にはっきりと映されていく。暗闇に怯えるその姿は、あの時の門番とは異なる服装をしていた。  男はこちらに気付かぬまま、倉庫の鍵をしっかりと閉めると、背中を丸めて来た道を戻り始める。  あの質素な身なり。恐らく下男だろうか? 少なくとも、あまり害は無さそうである。そういえばこの男は、上階から階段を下りてやって来ていた。という事は上にも入口があって、そこからさらに内部へと潜入する事が出来るのではないだろうか。二人は早速、彼の後を追い掛けてみる。  案の定、上へと通ずる階段を見つける事が出来た。男が完全に上り終えたのを確認してから、二人も後に続く。  上の階の内装は、下と全く同じと言って良いほど変わらなかった。引き続き後を付けていくと、男は比較的大きな引き戸から外へと出て行った。  あそこが出口か。男の気配が扉の向こうから消えて無くなるのを確認し、二人も引き戸を開ける。だが、次の瞬間―― 「で、出たあああぁぁぁーっ!」  こちらに気付いたあの下男が、大声を上げたのだ。
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