英霊会

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 例の引き戸からさほど離れてない位置で、男は腰を抜かしたまま大絶叫を続けている。  しかし、本当に愕然としたのはこっちだ。気配がすっかり消失したと思っていたのに、何故こんなにも近くにいたのだ? そして何より、何故ばれた!?  実はこの男、かなり前からクルス達の存在には気付いていた。かなりの臆病者である彼は、あの暗い倉庫の中に入っていた間、努めて何の気配も感じないようにしていた。しかし悲しいかな、暗闇の恐怖に怯えるその身体は、皮肉にも己の感覚を極めて鋭敏にさせてしまったのだ。  内塀の鍵を閉めた時から、彼等の気配は既に感じていた。だが、あまりの恐怖に叫ぶ事も出来ず、ただ杞憂だと信じて出口へと向かっていた。そして、やっとこさ外に出て、明るい月の光から僅かばかりの勇気を与えて貰い、後ろを振り返ったその刹那、彼等を見てしまったのである。  ちなみに、何故あんな近くにいたのかというのは、ただ単に下男という身分の低さ故にあまりにも影が薄かったからであろう。  ――そんな、下賎な男の思わぬポテンシャルにより、クルスとカミラはついに内部の者に発見されてしまったのであった。  哀れな男の叫び声を聞き付け、見張りの者達が溢れ出す。
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