英霊会

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 カミラの鞭がまた唸る。空気の弾ける音と共に、それは前衛の脚を打ち払う。下層から駆け上がって来た兵士達は悲鳴を残し、まるで雪崩のように崩れ落ちていった。 「カミラ、追っ手を防いでるだけじゃ意味がない。ここは前へと進んで行くべきだ!」 「んもぅ、そんなの分かってるよう。ちょっと数が多いんだってば」  突っ込むクルスに、カミラは口を丸めて不満を言う。見張りだけかと思っていたが、彼女の言う通り、予想以上に敵の数は多かった。流石、本拠地と言った所か。倒れた仲間を踏み越えるかのように、軍勢は自分達を捕らえるべく、前へ前へと押し寄せて来る。 「仕方ない。クルスちゃん伏せてっ! ――とおりゃっ!!」  叫んだカミラに従い、クルスは屈んだ。そしてカミラは、鞭で大きく頭上に円を描く。渦を巻いた鞭が放射状に広がって行き、周囲の敵を吹っ飛ばした。  ひゅっと風を切って真上を通り過ぎる長鞭に肝を冷やしながら、クルスは辺りを眺めてみる。ふと、最深部へと通じる門――あそこから駆け降りて来る兵士の数が、やけに少ない事に気が付いた。  何故だと怪訝に思った彼は、その門の上に並んだ『理由』を知り、思わずカミラへと飛び込んだ。
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