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「危ない、伏せろっ!」
カミラを突き飛ばした次の瞬間、彼女が先程いた場所に、何本もの矢が通り過ぎた。それらは地面に刺さると、次第に熱を帯びて発火する。
そしてクルスは、自分がカミラを突き飛ばした拍子に、彼女を押し倒すようにして倒れていた事に気が付いた。同じ極どうしを近付けた磁石のように、クルスは跳ね起きる。
――その隙を突くべく、兵士の一人がこちらに向かって剣を振り上げてきた。クルスは咄嗟に、空いた中段へと蹴りを叩き込む。
さっき飛んできたのは火矢だ。あそこから出て来る敵の数が減ったのは、どうやらそいつが原因らしい。今度はそれも視野に入れながら、こいつらを相手にしなければならないようだ。
カミラも立ち上がる。「いきなりなんて、クルスちゃんたら大胆ね」とか言ってきたので、とりあえずそれは無視した。
一騎当千の鞭が、再び唸りを取り戻す。カミラはひと振りで、襲い来る矢を近くの敵ごと払いのけた。
「でも大丈夫。ここは私に任せて、クルスちゃんは中に入って!」
そして強く、彼女は言い放つ。性格こそアレだが彼女の実力は凄まじい。その言葉を信じ、クルスは敵勢が薄くなった所へと、地面を蹴って走り始めた。
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