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「なっ!?」
気付いた所で遅かった。
無いはずの床に突如として現れた坂の傾斜は凄まじく、その先にある壁には、いつの間にか巨大な穴が口を開いていた。落とし穴のような罠に嵌まってしまったクルスは、うっかり足を滑らせて、そのまま穴の中へと落ちてしまう。
その姿はまるで、宮殿のダストシュートへと放り込まれるゴミ袋ようで。
「うわあああああぁぁぁー……」
落下していくクルスが最後に見たのは、「見事に誘い込む事が出来たぞ」という敵兵達の嫌らしい笑みだった。
◆◆◆
そんなクルスの哀れな悲鳴は、カミラの耳朶にも触れていた。
「えっ!? クルスちゃんどうしたのお!!?」
しかし、返事は聞こえて来ない。敵の喧騒に全てが掻き消され、一体何が起こったのか分からない。理解出来たのはただ、こちらにやって来る敵の数が増えた事のみ。
「仕方ない……」
鞭をひたすら振るい、敵を吹っ飛ばしながら彼女は叫ぶ。
「みんな、このお姉ちゃんが相手をして差し上げるよお!」
ただっ広い広場の中、カミラの叫ぶ声が、混戦の中に響いて行った。
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