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「なんだこれはっ?!!」
驚愕の叫びが、クルスの喉奥から飛び出した。
そこにあったのは、いや、いたのは、人間。両手を交差させ、固く目を閉じ、一糸纏わぬ生まれたままの姿で、一人の人間が入っていたのだ。
それも一人だけではない。その人間の頭上には透明な円盤状の仕切があり、その上にさらに人間の姿があった。そしてそれが、柱の上へ上へと永遠に続いているのである。
他の柱もだ。しかも、中に入っているのは男性だけでは無い。女性、子供、老人、片足の一部を失った者から生まれて間もない赤子まで、老若男女の人間が全て、その柱の中に入っていた。場所によっては、犬や猫まで。
あまりにも常軌を逸した光景に、クルスは動揺を隠せない。体中が震え、自身でそれを押さえ込む事が出来ない。
「とても……、これはとても正気の沙汰ではない! 一体なんなんだ。一体なんなんだこの部屋はっ!!?」
堪らず、クルスは辺りに大音声(だいおんじょう)を撒き散らす。
その時、張り詰めた冷たい感覚が、空気を、肌を通して伝わってきた。
――ここは永久寝(とわね)の間。生きとし生ける役目を終えた者達が、永久に安寧の眠りにつく部屋だ。
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