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「誰だっ!」
クルスは叫ぶ。しかし、その声は虚しく闇へと消えた。
――我等が同胞の罠に嵌まった憐れな愚者め。この神聖なる永久寝の間で、俺が永遠の眠りにつかせてやろうっ!
「なっ!?」
刹那、一陣の冷たい風が吹き、悍ましい殺気の流れがクルスの元へと襲い掛かる。そして、次の瞬間、
きぃん
咄嗟に手前に出した十字架が、何かを弾いた。その勢いに、クルスは背後へと飛ばされる。
受け身を取って立ち上がるが、何が起きたのか把握出来ない。分かるのは、素早い何かが迫ってきて、すぐさまどこかへ消えた事ぐらい。
ふと、何か黒い影のような者が前を通り過ぎたのを見た。それはすぐさま、別の柱の裏へと隠れてしまう。――あれが、声の主か?
随分とすばしっこく移動しているようだが、気配から察する辺り、敵はそいつだけのようだ。クルスは柱との距離が最も遠い場所に立ち、謎の襲撃者を感覚だけで探る。
目を閉じ、五体の感覚を研ぎ澄ます。やがて、隅々まで触手のように伸ばした感覚が、敵らしき影を捕らえた――その時、
クルスの振り向き様のキックが、今まさにこちらに刃を振り下ろさんとしていた身体に直撃した。
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