永久寝―とわね―の間

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 蹴っ飛ばされ、謎の襲撃者は無様に転がる。しかし、その様を見るクルスの表情には、余裕の色は無かった。あの気配だけで分かるのだ。地上にいた数多の兵士と比べても、こいつは明らかに格が違うと。 「クロスアーツ、我に力を」  半ば無意識に唱え、クルスは巨大な刃をそいつへ向ける。 「貴様、何者だ」  問う彼をよそに、襲撃者は起き上がる。そいつの服装は地上の兵士が着ていた衣(きぬ)に似ていたが、あれよりも比較的さらに皮膚に密着している感があった。頭に鉢金を巻き、首と腰から白い布を靡かせるその様は、かつて資料のみでクルスが見た事のある、東洋の隠密を彷彿とさせる。  顔の作りを見る辺り、歳は自分と同じくらいか。装飾の少ない見事な太刀を握るその顔には、峻峭(しゅんしょう)なまでのシワが刻まれていた。 「ルシ。この永久寝の間に眠る英霊達を、永遠に護る者だ。一方のお前は何者だ」  ルシと名乗った少年も同じく、刀の切っ先をクルスへと向ける。 「俺はクルスだ。聖天使教会の精鋭、クルセイダーとして、貴様等の実態を調査しに来た」  クルスが答えた次の瞬間、ルシの歯がニヤリと白く閃いた。
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