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「聖天使教会……だと? それは本当か?」
「そうだ。何が可笑しい」
クルスが答えた途端、ルシは口の端をさらに吊り上げた。彼は笑っていたのだ。しかし、口は笑んではいるものの、その眼は笑ってはいない。その様子に、クルスはまるで、氷の手で背筋を握られたかのような恐怖を覚える。
「そうか。それはなんと好都合だ。我等が不倶戴天の存在が、自らこの場にやって来るとは!」
次の瞬間、ルシの姿がすぐ目の前にやって来た。反射的に刃を寝かせたクレイモアが、振り下ろされた刀を受け止める。ルシの狂気に満ちた恐ろしい表情が、すぐ目の前まで迫った。
「不倶戴天? それはどういう事だ」
刃を力付くで押しのけ、クルスは問い返す。しかし今度は、ルシの刀はクルスの下段へと振り下ろされた。それも受け止めるが、すぐさまあらゆる方向から斬撃が襲い掛かってくる。
「そのまんまの事だ。まさかお前、お前達が一体俺達に何をしたのか知らないのか?」
その答えに、クルスは眉を潜めた。――何を言っているんだ? しかし、そんな事を考える暇は無かった。ルシの容赦ない斬撃が他方から押し寄せて来る。
それを受け止めるのに精一杯で、クルスは次第に、後ろへ後ろへと後退されるのだった。
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