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その一撃は凄まじかった。
自身の体重を全て指先に乗せ、急降下による加速も絡めた必殺の一薙ぎは、クルセイダーとて一介の少年に過ぎぬクルスの体躯など、ほんの容易に粉砕せしめる程の破壊力を秘めていた。
クルスのいた屋根がごっそりと刔れ、辺りに粉塵が舞い上がる。
しかしクルスは、そこの隣に立っていた。なんと彼は、ギリギリの所であれを回避していたのだ。
粉塵が全て消え去った時、そこにいたのは勢い余って横たわる黒天使の姿。この間隙を見逃す訳には行かぬ。クルスはそこへと刃を向けた。
袈裟から始まる斬撃の乱舞。その重量も感じさせぬ鮮やかな得物裁きで、一歩また一歩とクレイモアを振るっていく。刃が身体を斬り裂く度に、辺りに天使の血液が飛び、天使の悲鳴が響き渡った。
そして、最後の一撃。完全にバランスを失った黒天使の元へと、クルスは自身の回転を加えた渾身の斬撃を食らわせた。
クレイモアの重量ある刃の勢いにより、屋根から突き倒された黒天使は、村の外れに詰まれていた樽の山へと背後から衝突する。
崩れ落ちる樽の群れが、黒天使の元へと降り注いでいった。
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