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すぐさまごろんと転がり、クルスは間一髪でそれを回避する。
「何をした!?」
脇腹をほんの少しだけやられた。立ち上がるクルスの脚からも血が出ているが、それは別に行動に支障は無い。
聞かれたルシは答えを言わず、ただ手にする刀の刀身をすっと撫でた。力が塗り込まれたかのように、刃が青白く光る。
「本来なら、こんな神聖な場所では危ないから使わないんだがなっ!」
言い終わるや否や、ルシは刀をクルスへと振った。すると、刃から光が離れ、三日月型の斬撃波としてクルスを襲ったのだ。
「なんだと?」
横っ跳びで回避した場所の床が吹っ飛び、爪が一本だけの怪物が刔ったかのような溝が掘られる。
クルスからの怒声を挑発で返していたあの時、ルシは背後から、この技で彼の脚に狙いを定めていたのだ。結果は掠っただけだったが、相手を転ばすには十分だった。そしてそこへ、彼は追い撃ちの刺突を掛けたのである。
斬撃の波は一度だけでは無い。二度三度とそれは襲い掛かり、飛び道具に対抗する手段の無いクルスは、回避する事しか出来ない。
クルスは一本の裏へと隠れる。また防戦に戻ってしまった。
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