バカ高に転入

3/3
前へ
/23ページ
次へ
昇降口を探すこと10分…。 「やっと見つけた」 でっかい校門をくぐり、ふさふさの芝生を5分ほど歩き、校長か誰かの銅像を右に曲がり、また芝生を歩いたところに昇降口は存在していた。 「もっとわかりやすく作れって…」 ひとりでぶつぶつ文句を言いながら靴箱まで進み出した時、あたしの視界に人物が映り込んだ。 「誰だお前」 靴を履き変える姿勢であたしにそう聞いてきたそいつはどこか不機嫌そうだった。 「誰って転入生ですけど何か?」 「あ、そう…」 男は冷たく言い放ち去ろうとする。 しかしあたしの頭の中は全く学校の配置を把握出来ていない状況。咄嗟にあたしはそいつを呼び止めてしまった。 「ちょっと待って」 「ん?」 「職員室まで連れてってよ」 「まあ…いいけど」 案外…いい奴なんじゃん? とか思いつつ奴の後を追った。 「ここが職員室」 「ありがとう」 そうお礼を言って職員室の中へ足を運ぶ。 「あなたもしかして神沢美咲さん?」 先生らしき人があたしを見るなりそう口にした。 とりあえず返事をしておく。 「あ、はい…」 「私、あなたの担任の前川祐子です。よろしくね。あなたのことは事前に生徒に伝えてあるわ。まず教室に入ったら自己紹介ね。じゃあ行きましょう」 先生が席を立ち職員室の扉を開けた時だった。 「あら水沢くん。どうしたの?」 声のほうに目をやるとそこにはさっきあったあいつが立っていた。 こいつ水沢って言うんだ…。 「もしかして待っててくれたの?」 淡い期待を持ちながら静かに問い掛ける。 「悪いかよ」 水沢は照れたようにそう言った。 胸の奥の何かがキュンってなった。 ん?ちょっと待てよ? あたしは何か思い出したように頭をフル回転させる。 確か先生が自己紹介がどうのこうの言ってたよね。 自己紹介ってなんだろう。 事故を紹介すんのかな? 特に気にすることもなくあたしはふたりの後を追った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加