一章 旅立ちの鐘

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「本当に行くんですか?」 俺の前に立つ長い艶やかな黒髪の女性は俺に問う。 「うん、イオナさんが反対しても俺は行くよ」 イオナさんは俺に向けて少し寂しげな顔を見せた。 「ルイ、『俺は』じゃ僕が入ってないよ」 俺の言葉に横やりを入れてくる真横にいる男。 俺より頭一つ分ちっちゃいから、視界に入らなくてついつい忘れてしまう。 「イオナさん、俺たちの意志は堅いよ」 イオナさんは観念したように小さくため息を吐く。 「いつかはこんな日が来るとはわかってたんですけどね。あなた達が密かに荷造りしてたのも気付いてましたよ」 かなり極秘で進めていたのに、まさかイオナさんにバレてるとは。 イオナさんは窓際まで移動し、その窓を開け外の空気を取り入れた。 のどかな青空を鳥が飛んでゆく。 「いつ発つ予定なのですか?」 「今日からでも行こうかなって」
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