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「どうかされましたか」
一人家の縁側に腰をおろしていると、菊に声をかけられる。
そのまま菊は我の横に腰をおろす。
「別に何でもねぇある。…ただ、」
―消えたらどうなるのか考えてただけある
ずっと、それこそ他の国とは比べようの無いくらい永い時間を生きてきた。
だからこそ生まれる滅亡への恐怖。
ぽつりぽつりと空から落ちてくる雫。
それのせいか徐々に視界が歪んでいく。
「大丈夫ですよ」
そんな言葉と共に頭上に降ってくる温もり。
まるで幼子をあやすかのようにゆっくりと頭を撫でられる。
「他の誰が忘れようと私はずっと忘れませんから」
暖かい、言葉。
地を照らす太陽のような。
少し顔を上げ、ちらりと横をみる。
そこには優しく微笑む菊の顔。その後ろに見えた空は青く輝いていた。
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