紅の姫君

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「……驚いたか? 私が現れたことに」 部屋のドアを閉めると 素の口ぶりに戻って、サラは笑った。 しかしラズロの答えを聞いて、彼女の方が驚くことになる。 「いや、計算通りだったよ。 きっとお前が来ると思ってた」 「なんだって……? 知っていたのか、いや、見切っていたのか」 「ああ、そうだ。 ベルトロは、ひとり娘を溺愛しているから、きっと手放さないだろう。 そうかといって、適当な女を寄こすわけもない。 ……ベルトロが休戦の申し立てをしてきた時、俺が親父に言ったんだよ。 そろそろ、赤組のお嬢さんが欲しいってね。 そしたらルートの代わりに、お前が送り込まれると思った。 スパイを兼ねて、さ」 聞きながら、サラは徐々に全身が緊張していくのを感じた。 「……なんてことだ。 初めからこれを狙っていたのか。お前、とんだ策士だな……! 赤組は、見事に嵌められたというわけか。 私をどうするつもりだ? ……レオンは無事なのか」
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