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侍女達はサラをうっとりと見つめていた。
「城の者は皆、お嬢様のお美しさに恍惚としているんですのよ。
ご存知?」
「ただお美しいだけでは、ございませんわ。
凛としていらっしゃいますの。
紳士のような魅力もお持ちだわ。
剣士達ばかりではなく、城の娘達も皆、貴方に夢中なんですのよ」
……一人が口を開けば、まるで争うかのように口々に、誰もがサラを褒めちぎる。
まるでエサにたかるアリのようだ。
おおかた、彼女に気に入られ、傍付きの仕事をもらいたいのだろう。
「……やめてください。
そのようなことを言うのは」
サラは鬱陶しくなって
彼女達と同じような言葉遣いを心掛けることをやめた。
「必要以上の賛美など、私には息苦しいだけです。
……その衣装を身につければ良いのでしょう。
こんなに大勢の方の手を煩わせるまでもありません。
2、3人手伝っていただければ充分です。
他の方はお下がりください」
不機嫌な調子であるのが、サラ自身わかっていた。
しかし、彼女は少し静かに考えたかった。
これからどうするべきか、予想外のラズロの言葉と対応に揺れる自分を
未だに立て直しきれていなかった。
……そこに、再び扉がノックされた。
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